寿円佳宏 wonderland

スポーツ業界紙「スポーツフロンティア」に掲載しているコラムをブログで紹介。

見える論理と、見えない感性

 長く企画の仕事をしていて感じる事がある。常に心がけているのは、オリエン(企画前の方向付け)の重要性だ。まずは依頼者の意図と課題を聞き、その場で企画の落としどころを見つける。逆に言えば、見つけられるまで粘る。この段階でポイントを絞り込めると、うまく行く事が多い。ここでポイントを絞り込めないと、あれこれ悩み、生産性のない時間を費やす事になる。結果、肝心の企画に十分な時間をかけられず、良質な物を作れない。またコストや納期もかかるという悪循環に陥る。もう一つ、限られた情報でもその段階で、仮案を常に考える様にしている。その上で、この後与えられる時間の中で別案を考える。イメージとしては左手に案を持ちながら、右手で新しい案を考え、いい方を残していく。それを時間ギリギリまで何度でも粘る。こんな作業を自分の中で繰り返している。

 どんな仕事も一人でなくチームでやる。チームで仕事をする際は、目標を決め、役割と計画を決め、進めるのが普通だ。途中でやる事が変わるのは周りの人たちに迷惑な話である。厄介なのは、私にとっては連続した中で自然な変化なのだが、周りは違う。それでも許容してくれているのは有難い限りである。決めた通りに進めて良いものができればいいが、そう簡単ではない。企画書の段階で面白いと思うものは、そのまま作ると大抵面白くない。やってみないとわからない企画の方が良い結果になる事が多い。理想としては、企画の方向や、予算、納期は決め、後は現場に任す。裁量権を与え、現場で速く修正するしかないのだ。

 常々「シンプルが一番」といいながら、長々と書いているのは、こうした事は言語化が難しく共有しづらいから。一方、目標を決め、課題を洗い出し、対策をたて、実行する論理的なやり方は、言語化でき、数値で見える良さがある。組織的で再現もしやすい。論理的なやり方の有効性に異論はないが、突き詰めるとどこも同じ所に向かうはずである。理想的には、トンネルを両方から掘り進める様に、論理と感性を両方から進め、独自の一本に繋がる。答えのない不透明な時代に、論理と感性のバランス、これをどう実現するかがこれまで以上に重要になっている。