寿円佳宏 wonderland

スポーツ業界紙「スポーツフロンティア」に掲載しているコラムをブログで紹介。

理解よりも、行動の時代(2016年12月)

 「AI」と「IoT」いう二つの言葉。第四次産業革命とか、全ての業種が情報産業に向かうと言われるキーワードだ。これまでも同じような言葉が、泡のように生まれては消えてきた。またかと思えるが、今回はちょっと雰囲気が違う。新聞では各社の取り組みが連日ニュースになり、この言葉に触れずに一日を過ごす方が難しくなっている。少しは勉強しようと東京大学の松尾豊さんの著書を読んだ。これが面白かった。技術面については全くの不案内であるが、人工知能の仕組みや考え方には、なるほどという発見に富んでいた。人工知能は言葉の通り、何かと人間と比較される。物事を階層化・体系化し、考え方を設計・構築、そして処理するという点は、人も機械も共通する所は多い。データの処理量とスピードは機械が圧倒的に勝っている。機械は絶対的な位置(距離)をベースに検証を繰り返し精度を高める。一方、人は情報を抽象化する能力に長けている。少ない情報から、自分の興味に合わせて抽象化し、ストーリーから判断する事ができる。さらに違う種類の情報から共通項を見つけ、置き換える事ができる。これが面白い。逆に言えばこれが機械の課題でもある。同じことを目指しながら、アプローチの仕方が違うという話であった。AIを知りたくて手に取った本であったが、人間の思考プロセスや、知恵の意味を考える事になった。

 コンピュータに出会った時も同じような経験をした。当時私はアナログ大好き(今もそうですが)で、コンピュータは画一化を手助けるものという錯覚があり、敬遠していた。ある人の言葉でコンピュータに触れるのだが、ここで面白かったのはロジカルに考える事。論理的に考えるようになったのはコンピュータのお陰と言える。わからなくても、触れる事でわかる事は多い。スマートフォンもそうだ、使うほどに世界が広がる。今の時代、わかってから使うのでは遅いのだ。わかる頃にはもう次が出ている。AIIoTも同じだろう。高価で一部の企業や人のものという時期は、あっという間に過ぎる。テレビや電話のように仕組みがわからなくても、誰もが意識せずに使う事になるはずだ。理解よりも行動。そんな時代だと思う。