寿円佳宏 wonderland

スポーツ業界紙「スポーツフロンティア」に掲載しているコラムをブログで紹介。

情報の波を乗りこなす力

 すべての国、すべての人の恐怖になったコロナウイルス。感染による人命の危機はもちろん、人やモノの動きが止まる社会へのインパクトは想像を絶する。世界の近さと、世界の広さを再認識する事になった。心配された東京オリパラも1年延期でとりあえず落ち着いた。

 今回別の意味で気になった点に触れたい。「情報」についてである。連日、政府、メディア、SNS、日常会話と、至る所で様々な人から、オフィシャル、私的見解、又聞きとして、多くの情報が伝わってくる。初めてのウイルスなので、私達には身体的にも知識的にも備えがない。情報は欲しいが、何が正しく、何が間違いなのか判断が難しい。それでもマスクが有効か、病院へ行くか、通勤電車は、会社は、学校は、イベントは、と選択を迫られる。先に症状が出た中国や韓国、過去の事例をヒントに、試行錯誤しながら正解に近づくしかないのだろう。私たちにできるのは、目の前の一面的な情報に振り回されるのでなく、常に多面的にチェックし、咀嚼する事だと思う。

 先日、国際的な学力調査PISAの発表があった。世界72カ国、54万人の中高生が参加。3年に一度「読解力」「数学的リテラシー」「科学的リテラシー」の習熟度を調査している。昨年末に直近の結果が発表された。日本は、数学的リテラシー6位、科学的リテラシー5位であったが、読解力は前回の8位から15位と大きく下げた。その要因は何か。調査にコンピューターが導入され、設問を一つづつクリアしないと次に進めない設計が、一つとも言われている。が、大きいのは次かと考えられる。日本の学生が優れているのは、情報が正しいことを前提に意味を理解する力。PISAでは、清濁混ざった多様な情報から選別するのも読解力と位置づけている。これが順位を下げた。アメリカを見本に追いつき追い越せの高度成長期が象徴する様に、明確な目標に一丸となって向かうのは日本のお家芸。不透明な中から課題を見つけ咀嚼する力が弱い。まさに今求められているのはこの力。これはコロナだけでなく全てに通じる話である。これからも予期せぬ出来事が、起きる可能性は高い。それを前提に普段から多面的に考え、咀嚼する習慣をつけたいものである。