寿円佳宏 wonderland

スポーツ業界紙「スポーツフロンティア」に掲載しているコラムをブログで紹介。

シンプル&ストレートが強い  

 健康という共通項で躍進している2社が気になっている。一社はライザップ。「結果にコミット」という魔法の言葉を発明し、ボディメイクからゴルフや語学などに事業を拡大すると共に、次々とM&Aを実施。その中には馴染深いスポーツ企業も含まれている。プロの経営者として有名なカルビーの元CEO松本晃さんが経営に加わった事でも注目されている。もう一社はMTG。社名は馴染薄いかもしれないが、クリスティアーノ・ロナウドとコラボしたトレーニングギア「SIXPAD」を知る人は多いだろう。他にもインバウンドにも大人気の美容機器「ReFa」、歌手のマドンナがプロデュースする化粧品「MDNA SKIN」など多くの著明ブランドを持つ。こちらは先日株式上場を果たし、その時価総額はその直前同じ市場に上場したメルカリに次ぐ規模となっている。

 「人生100年時代」を迎え、健康や美へのニーズが背景にあるのは確かだ。が、私が気になっているもう一つの共通項、それはマーケティングだ。どの商品も特徴がシンプルで独創的。初めから世界を狙っている。まずは商品の素晴らしさが前提にあるが、それを著名人とテレビを使い短期間に、徹底的に刷り込みを図った。両社共にテレビ全盛期の王道とも言えるマーケティング手法を選んでいる。メディアの主役が、インフルエンサーやアンバサダーを使ったソーシャルマーケティングに移る中、逆張りで成功している。商品の特性にもよるが、テレビかソーシャルかと一律に判断できるものではない。認知向上が目的である事に変わりはない。ソーシャルは相手に委ねる部分が大きくコントロールしづらい。コストも思った程安くない。テレビは影響度をコントロールできるものの、好意的に受け入れられるかどうかは解らない。しかし圧倒的な投入量は、好き嫌いを超えて認知を促し、テレビ離れを簡単に跳ね除ける力を持つ。好きなタレント・嫌いなタレントの調査があるが、同じ人が両方にランキングされる事が多い。タレントの出川さんは、嫌いなタレントから好きなタレントに大化けした。最も悪いのは知られていない事だ。一気に顧客の頭に侵入するには、やはりシンプル&ストレートが強い。