寿円佳宏 wonderland

スポーツ業界紙「スポーツフロンティア」に掲載しているコラムをブログで紹介。

成長の共通項は「ピボット」

 休日は、いつもよりゆっくり新聞に目を通す。そんなある日、今日は「元気な企業特集」と錯覚するほど、連続して成長企業の記事を目にすることがあった。記事はいつもと変わりないが、私が「そう読みたい」と思ったのかもしれない。目に付いたのは、富士フイルムHDアイリスオーヤマ、学研HD。共通するのは「ピボット」している事。ピボットとは英語で回転軸。ビジネスでは企業経営の方向転換、路線変更を意味する。

 まず富士フイルム。ご承知の通り、カメラのデジタル化で存続の危機に。シェアを分け合ったコダックは破綻。富士フイルムは事業の多角化を成功させる。最も期待するのがヘルスケア。次々買収を進め、直近では日立製作所から医療機器事業を買収する。またドキュメントでも、一旦は親会社のゼロックス買収に動くが、買収先株主の反対に会い方向転換。逆にゼロックスから独立することを決断。手を休めない施策、当事者はジェットコースターに乗っている気分だろう。

 次にアイリスオーヤマ。広く知られる様になったのは収納ボックス。その後ガーデニング用品、ペット用品、お米、LED、そして最近は家電と、次々とヒットを飛ばしている。アイリスオーヤマが面白いのは販路戦略。最初に開拓したホームセンター、そこに集まる顧客が必要とする商品を、高いコスパで提供してきた。生産背景を軸にする多角化は多いが、販路から多角化する例は珍しい。その日の記事は、65型で4Kチューナー内蔵のテレビを12万円代で発売するという。低迷する家電メーカーを尻目に、ダイソン並みに家電を輝かせている。

 もう一つは学研。富士フイルム同様、教育出版界の盟主であったが、少子化に直面。強化しているのは介護事業。サービス付き高齢者住宅をはじめ、認知症高齢者向けグループホームを手がける。成長が見込め、教育事業で培った資産を活かせる市場に、巧みにシフトしている。いずれも祖業は大切にしながらも、それだけにこだわらない。自らの強みを活かしシナジーを最大化する。小さな市場で努力するのでなく、より大きな市場に乗り換える。そうした施策を組み合わせ、無謀とも思える挑戦を、「勝てる戦い」に変えている所が凄い。