寿円佳宏 wonderland

スポーツ業界紙「スポーツフロンティア」に掲載しているコラムをブログで紹介。

ITが世代交代を加速させる(2015年9月)

 多くの産業がITの力で構造転換を迫られている。しかもそのスピードは全く経験のない速さだ。私が最初にネットに出会ったのが96年くらいで、当時ネットは手付かずの新世界に映った。早くやらないと誰かがやってしまう。毎日何をしようかワクワクしていたことを思い出す。その頃はマイクロソフトが破竹の勢いで、伝統的な企業から主役の座を奪い独走していた。これを覆す企業はもう出てこないのではとさえ思われたが、その後グーグル、フェイスブック、最近ではウーバー、エアビーアンドビーなどが続々と登場。マイクロソフトはビジネスモデルの変換を余儀なくされている。絶対優位なんていうのは過去の夢、入れ替わるスピードも10年単位が数年に。あっという間に世界が入れ替わる。グーグルは先日持ち株会社「アルファベット」を設立。インターネットに続く、世界を変える新しいイノベーションを目指す。ベンチャー意識を取り戻し、誰かがやる前に自ら取り組むしか道はないという事だろう。車でも同様の事が起きている。自動運転やネットワーク化により、車は走るコンピューターであり、様々な移動をサポートするロボット化しそうである。ここでも確実に世代交代は進んでいる。

 翻ってスポーツはどうだろう。過去を見ても私の知る限り上記ほど劇的な変化はなかったように思う。アディダスによる競技団体と一体となったマーケティングの成功、ナイキのテクノロジーとキャラクター戦略、かってナイキを抜いたこともあるリーボックのウイメンズ戦略があったくらいである。巨人のアディダスは今なお巨人でいる。着圧アンダーを発明したアンダーアーマーが最も新しい所である。スポーツにおいてもITを最大に活用する所が次の時代を担うであろう。すでにランニングやトレーニングのアプリでは様々な所が取り組んでいる。またIT企業の買収や提携も進んでいる。選手やチームのパフォーマンスを最大化するための計測、課題はあるが遺伝子による適正診断、身体の動きをサポートするロボット応用など、さらに今の私には思いつかないイノベーションが数多くあるはずである。一歩踏み出せば、これまでとまったく違うスポーツの景色が待っているはずである。