寿円佳宏 wonderland

スポーツ業界紙「スポーツフロンティア」に掲載しているコラムをブログで紹介。

共通規格とローカライズ(2014年10月)

 ユニクロが吉祥寺に都内最大級800坪の新店を開店した。この店舗が注目されているのは、規模でなく初の地域密着型という点だ。ご存知の通りユニクロはファストファションの代表で、全国どこでも同じ商品、同じ価格、同じ環境で買い物ができる安心感を売り物に成長してきた。それだけに今回の地域密着型店舗という挑戦は新鮮で、時流を掴むセンスを感じる。新店舗はこれまでとは逆の発想で、吉祥寺でしか通用しないアイデアを満載、店づくりには地元の人に企画から参加してもらったという。地元に住む人をモデルに、地元の人なら誰もが知る場所で撮影した写真を店内外の広告物に採用。また漫画家の街でもあることから、吹き出しを使い店内をコミック風に演出したりもしている。ユニクロの枠を超え、新店舗を町おこしの起点にするという取組みが新しい。

 一方、ファストの本家本元マクドナルドが業績不振にあえいでいる。中国食肉加工会社の使用期限切れ鶏肉使用で顧客離れが深刻化したことが大きいが、それ以上に潜在していた問題が一気に吹き出したとも思える。個人的で恐縮だが、出先の時間調整などで同様の店を利用するがマクドナルドを選ぶことは少ない。利用動機はワイファイくらいしかない。景観を配慮した看板の色づかいに一部地域差はあるが、それ以外は共通規格で、安心感より退屈さを感じていた。食は誰もが1日3度の経験をし、他の消費に比べると顧客の嗜好が最も成熟しているため、さらなる多様化が求められるはずである。そういった意味では、グローバルダイニングのようなコアターゲットに焦点を絞り一定の規模以上には拡大せず、新ブランドを次々と展開する方が合っているかもしれない。スターバックスのようなチェーンでも、ソファーや店員のサービスなど個店毎の特徴を出している所は受けている。

 効率性と多様性、それぞれの業種や企業のステージでも違うし、どちらが正しいかという問題でもない。これまで新事業の立ち上げは、大きなコストがかかり効率化しないと難しかったが、ITや外部ネットワークの進化によりハードルが著しく低くなった今、多様でありながらも効率的というやり方が可能になった。ユニクロ吉祥寺店はこれからの道を示唆していると感じる。