寿円佳宏 wonderland

スポーツ業界紙「スポーツフロンティア」に掲載しているコラムをブログで紹介。

ローカルとグローバルは隣どうし(2015年10月)

 政府が観光立国の名の元、目標にした訪日外国人は1000万人を突破、2000万人も見える所に来ている。街で多くの外国語を耳にしたり、買い物のすごさを話題にしたのは少し前。最近は、絵に描いたような観光客だけでなく、限られた時間と予算を工夫しながら日本を楽しんでいる普通の人たちが増えたように感じる。先日、日本人と見間違うような若い二人から地下鉄の切符の買い方を尋ねられたり、観光案内に載っていないような場所の行き方を、立て続けに聞かれたからかもしれない。どう見ても爆買いとは縁のなさそうな人たちが、違った意味で日本に興味を持っていることを嬉しく感じた。また取引先のアジアの人たちが、プライベートで日本に良く来ると言う。今度行きたいのは東北で、温泉と食事が楽しみらしい。東京や京都だけでなく日本の様々な地域や文化が注目されていると聞いていたが、まさにそれを身近に確認した次第である。普通になり過ぎていたり置き忘れていた日本の良さが、外国からの新しい視点で再発見させられることも多い。外国人の訪問者数ナンバーワンの国はフランスで年間8000万人を越している。2014年の調査で日本は世界で22位、アジアで7位。多様性と刺激を受け入れるという意味ではまだまだ、ようやく一歩踏み出した所かもしれない。

 昔から低迷する社会や組織に新しい風を吹き込むのは「わかもの、よそもの、かわりもの」と言われている。日本でも、過去の常識に見切りをつけると共に自らのクリエイティビティを信じ、伝統工芸や地域再生に取り組んだり、誰かの役に立ちたいと新事業に取り組む若い人たちが増えている。またこれからの社会の姿として、地産地消にこだわったり、6次産業に取り組む企業や自治体が増えるなど、価値の多様化が進んでいるのも心強い。私自身これまでグローバルとローカルは、直線の端と端に位置すると考えていたが、先の訪日客や若い人たちの行動を見ると、直線ではなく輪と考えた方が自然な気がする。対極と思えたローカルとグローバルは実は隣どうしで、ローカルを突き詰めるとそれがグローバルに繋がる。著名でなくても本物は世界から見つけられる。そんな事を学んだ気がする。