寿円佳宏 wonderland

スポーツ業界紙「スポーツフロンティア」に掲載しているコラムをブログで紹介。

したたかにAIを手なずける顧客

 弊社の調査で顧客に直接ヒアリングする機会があった。その中で「情報の接し方」が興味深かったのでご紹介させていただく。母数は数十人と限られた数であるが、何となく思っていた事を確認することになった。私が感じたのは次の三つ。情報の接し方が、検索からSNSに急速にシフトしていること。もう一つは動画へのシフト。そして顧客の態度が能動的から受動的になっていることだ。

 検索は便利だが探せるのは世間一般の情報。それより家族や知人など信頼できる人の情報の方が信じられる。SNS化は予想されたが、浸透度は年代によっても違う。私の年代は調べものといえば、本屋か図書館に行くという時代である。それがネットスケープやヤフーが登場し、インターネットで情報を探すようになった。SNSも使うが、探し物といえば、まだグーグルをたたくのが習慣になっている。だから、そのキッカケになるキーワードが重要と考えているが、その考えもいささか怪しくなっている。

 私はSNSを知人の近況を知るというより、興味ある情報を集めるツールとして利用している。ネットが個人の趣味や興味を探ってくれる事を、逆手に取っているつもりであった。興味を持ったら、積極的にクリックしたりシェアする。そうすると欲しい情報が自動で集まってくるのだ。この方法を私独自と思っていたら、多くの人が同様の活用をしていると知った。人によっては、興味別にアカウントを作り、情報を収集できるようにしているらしい。企業もユーザーも、水面下でしたたかな戦いを続けているという事だろう。

 動画へのシフトは、情報量が急激に増えた事と、それぞれが非常に忙しく、一つの事に使える時間が短くなっていることが大きい。テキストより画像、画像より動画。瞬間的にわかるフォーマットに移っている。 最後に、能動から受動にという顧客の態度変容。これも情報の多さと、顧客が使える時間の制限に寄る所が大きい。そうした中で、テクノロジーを最大に活用することは悪くない。望むことは、こうして効率化を図ることで生まれた余裕を、怠けるのではなく、新しい価値を考える楽しみにしたいものである。思考停止が人を最大に退化させると思う。