寿円佳宏 wonderland

スポーツ業界紙「スポーツフロンティア」に掲載しているコラムをブログで紹介。

強い信念と、諦めの悪さ(2017年4月)

 ユニクロは先日、東京・有明に大型のオフィス兼物流拠点を開設した。商品の企画・生産から物流、社員の働き方までを一体改革するプロジェクトで、赤坂の本部で勤務していたスタッフ約1000人が移動した。同時に「アパレルの製造小売業」から「情報製造小売業」に事業を再定義し、ビジネスモデルの変革を進めるという。このニュースに興味を持ったのは、これは単にユニクロの話ではなく、日本の全ての企業が直面し対応を迫られている課題で、ユニクロの挑戦は一つの道標になると思えたからだ。全ての起点を顧客にする、行動や嗜好まで含めた幅広いデータの収集と活用、7日で作り3日で届ける生産体制、仮想の街に見立て様々な人が自由に行き交うワンフロアのオフィスなど。次の時代に向け、物心両面で大変革を起こそうとしている。同じ商品を大量に作り、同じ仕様の店舗で、同じオペレーションで、高品質な商品を低価格で提供するというビジネスモデルとは、正反対のことに取り組むということだ。まさしく第二の創業で、それを支えているのはデジタルイノベーションである。吉祥寺の新店あたりから、統一オペレーションでなく、地域特性に合ったローカライズを行う兆しはあったが、今回は全社をあげて舵をきったのだから、意思の強さも行動のパワーも半端ないと想像される。

 車の自動運転や個人のモビリティ、ヒト型ロボット、空を自由に行き来するドローン、予約を完売した宇宙旅行鉄腕アトムやバックトゥザフューチャーで見た世界が、現実になろうとしている。短期間で世界を席巻したウーバーやビーアンドビー、このサービスも昔からあるアイデアである。違うのは支えるテクノロジーだ。コストも劇的に下がっている。ユニクロの目指す姿も、昔から多くの企業が考えてきたことで新しいものではない。違うのは諦めないこと。これが大きい。私たちも過去、できたらいいねという事を数多く考えてきたはずである。一度諦めたことも、今のテクノロジーやコストなら、復活できる事がありそうである。お蔵入りしたアイデア、この機会にもう一度棚卸してはいかがだろう。IT系スポーツ企業に化ける貴重な種が潜んでいるかもしれない。