寿円佳宏 wonderland

スポーツ業界紙「スポーツフロンティア」に掲載しているコラムをブログで紹介。

次の時代は次の人たちが作る(2018年5月)

 今年も十数名の新社員を迎えることができた。スポーツは人気業種で弊社でもけっこうな倍率となっている。エントリーシートから始まってSPI試験、グループインタビューや面接などを通過してきた精鋭達である。いつも思うのだが、当時の私が試験を受けたら、確実に落ちる。今の自分でも危ないかもしれない。時代が違うというよりレベルが違う。売り手市場という現在にあっても、今の子たちは入念に準備して臨む。選ぶ方も応募する方も、格段に洗練されている。

 とは言え、こうした精鋭達がその後成長し中軸に育つかとなると別である。ゴルフの練習場でいくら調子が良くても、それは練習場の話でコースとは別物。そんな感覚に近いのかもしれない。言えるのは、想定されたことにはめっぽう強い。またその幅も広い。ある選考者は、意外な質問をしようと練っていたが、すべて良く聞かれる質問としてネットに掲載されているのを見て愕然としたらしい。生まれた時からインターネットがあり、物心ついた時にはスマホがあるデジタルネイティブ世代。また周りへの気遣いを優先する優しさも持ち合わせる。賢く好まれるように演じているだけで、本質はそれぞれ個性豊かな様に思う。

 以前にも触れたことがあるが、スポーツやアーティストといった障壁が低い分野では、10代や20代の若い人達が世界を舞台に活躍している。最近は日本でも起業する若者が増え、同年代の実業家が目立ち始めている。高校生の起業家や20代までを対象にしたファンドも生まれている。基礎となる能力やネットワーク力は高い。組織のヒエラルキーや過去の成功体験という枠が、せっかくの能力を閉じ込めていた。今その呪縛がすごいスピードで溶けている。制約がなければ飛び出してくると信じたい。

 先日北欧の幼児教育を視察してきた知り合いの話を聞く機会があった。日本でも32Xという答えが一つの教え方から、XY5というような複数の答えを導く教え方に変わって来ている。北欧ではさらにXYZ。問題も答えもすべて自分で考える。何も教えず、見守るだけといった教育で成功しているという。それに倣えば「信じて、まかす」ということだろう。理屈ではわかるが、これがまた難しい。