寿円佳宏 wonderland

スポーツ業界紙「スポーツフロンティア」に掲載しているコラムをブログで紹介。

プログラム、語学、スポーツ(2016年8月)

 プログラミングを2020年までに小学校で必修化することが、政府の成長戦略として検討されている。あらゆることがコンピュータ化する中で、プログラミングは専門家だけでなく、全ての人に必要になるということだ。同じようなことで言えば英語がある。今は小学5年生から必修になっている。2020年には小学5年から教科に、小学3年から必修になるらしい。プログラムと語学はこれからの時代の必須能力と位置付けられている。言葉遊びになるが、この二つを学ぶ意味を知る上で重要なことがある。プログラムを学ぶのでなく、プログラムで学ぶ。語学を学ぶのでなく、語学で学ぶ。「を」を「で」に置き換える事に大きな違いがある。プログラムで言えば、本当に学ぶのはスキルではなく、背景にある原理原則や、論理的に考える力である。語学で言えば、通訳能力でなく多様な人たちと交じりコミュニケーションする力である。

 私はこの「プログラム」と「語学」に「スポーツ」を加えることができるのではと考えている。スポーツも同様に「を」を「で」に変えることで、やっている同じことが全く違った事になるはずである。トップアスリートとして活躍できる人もいる。しかし多くの人はそうでない。結果につながらなかったとしても、それまでのプロセスに様々な価値が蓄積されている。小さい頃には、目標を見つける。うまくなるために自分で考える。努力してできる楽しみを知る。みんなで目標に向かう。誰かを助ける。こんなことを、遊びの中で意識せずにやっている。もう少し成長すると、自らを知り、相手を知り、目標を決め、不足を補うために計画する。毎日ゲームをしながら読解力や構想力を磨いているとも言えるのだ。いずれの能力もスポーツだけでなく、仕事や社会生活を送るために極めて重要な要素ばかりである。一生懸命スポーツにつぎ込んだ時間は決して無駄でなく、どこに行っても使える貴重な能力を育てる。

 これからは答えが一つでなく、課題を見つけることから始めなければならない時代である。スポーツは楽しみながら、それを毎日疑似体験できる絶好の場である。共通して言えるのは、身につけるべきたった一つは「学ぶことを学ぶ」という事だろう。