寿円佳宏 wonderland

スポーツ業界紙「スポーツフロンティア」に掲載しているコラムをブログで紹介。

答えも課題も、自分で見つける(2018年4月)

 人工知能が発達する背景には、様々なモノが繋がるようになったこと(IoT)、ネットワークを使って雲のように離れた所にあるソフトウェアやデータを使うサービス(クラウド)が主流になったことが大きい。この二つにより、ビッグデータと呼ばれる大量のデータを迅速に処理することができ、AIは急速に進化した。そんな事をやっと腑に落とせたと思ったら、新たにエッジコンピューティングという言葉が飛び込んできた。クラウドかエッジという二者択一ではなく、それぞれの特性を活かした組み合わせが大切な様である。エッジと呼ばれるように、どこか離れた所にサーバーがあるのでなく、利用者の近くにサーバーを配置する事で、データのやりとりにかかる時間を短くする。センサー等から集まるデーターをリアルタイムに処理するには、クラウド経由では遅すぎる。データ量ではクラウドに強みがあるが、スピードではエッジが強い。より速い判断が望まれる、車の自動運転や工場の安定稼働、顔認証ではエッジが向いている。これまでも「分散」と「集中」を繰り返してきた。今後も得意な機能を分担しながら、分散と集中を繰り返すのだろう。

 分散への移行という点で、もう一つ面白い話がある。これも最近注目されている事であるが、米軍式のマネージメント手法、OODA(ウーダ)だ。おなじみのマネージメント手法にPDCAがある。PDCAはビジネスを合理的かつ効率的に進めるのに役立つ。環境や与件の変化が少ない時は、PDCAは効果的で今なお広く使われている。OODAは、戦場で産まれた機動性に優れたマネージメント手法。市場や顧客ニーズの変化が速い中では、固定的なPDCAより機動的なOODAが向くと言われる。OODAは、Observe(観察)、Orient(状況判断、方向づけ)、Decide(意思決定)、Act(行動)の頭文字。状況が読めず刻々と変化する戦場では、一瞬の判断の遅れが死に繋がる。本部の指示を待っている余裕はないギリギリの状況から産まれた。現在のビジネス環境は安定より変化の時だ。また正解のない時代、答えの前の課題すら定まらない時代でもある。それだけに現場が裁量権を持つ面白い時である。