寿円佳宏 wonderland

スポーツ業界紙「スポーツフロンティア」に掲載しているコラムをブログで紹介。

新しい船には新しい水夫を(2016年3月)

 人は思考も行動も、慣れた習慣から抜けにくいものである。先日あるデジタルメディアを利用した広告(もはや死語ですが便宜上使います)で気づいた事がある。顧客との接点が、従来のメディアからネットに変わリ、当社でもこちらに比重を移している。表向きは、雑誌などからウェブに変えているのだが、その利用方法は旧態然のままであった。ウェブはページビューやクリック率など、以前より効果測定がしやすくなっている。しかしサイトを選ぶ際、雑誌の発行部数に当たるサイトの利用者数をついつい見てしまっていた。多くの利用者がいるサイトがいいサイト、影響力があると思い込んでいた。これはこれで一応の影響力があるが、デジタル化によって起きている本当の可能性を理解しているとは言い難い。

あなたが利用者としてサイトを利用している時を振り返って欲しい。このブランド最近すごく元気でたくさんの広告を出しているとか、今興味を持っていることに合致する広告が頻繁に出てくると、感じたことはないだろうか。旧メディアは一斉同報で、みんな同じものを見ていた。デジタルでは、一人一人違った広告を見ている。枠から人に。サイトに広告しているのでなく、人に広告しているのである。広告が人を追いかけているのだ。テクノロジーの進化により、あらかじめ広告枠を買うから、人が興味あるコンテンツに接触した瞬間に最適と思われる広告が流れる。こんな時代になっている。枠という概念が払拭できていなかった。これが反省点である。

長々と書いたが、それぞれの立場や状況に違いはあっても、いろんな所で同様のことが起きているのではないだろうか。新しい技術や道具が生まれたら、新しい考えややり方とセットしなければならない。この考えの遅れが時代の波を掴めない要因の一つだと思う。もうひとつ重要なのは、新しい考えややり方を先駆けてキャッチするのは、大抵若い人や女性だ。しかしこれにゴーを出す決裁権を持っているのは、過去の成功体験に住む年配者である。この構図も大きな問題である。先が読めない時代だからこそ新しい可能性に勇気を持ってアクセルを踏む。安全そうなのが一番危ない。修正しやすいのもデジタルの特徴である。