寿円佳宏 wonderland

スポーツ業界紙「スポーツフロンティア」に掲載しているコラムをブログで紹介。

あいまい、間がおもしろい。(2012年12月)

 古い友人に久しぶりに会い、面白い話を聞いた。元広告代理店の企画屋さんで、今は地域活性化の手伝いをしているという。都市を行き交う人と企業との垣根を低くし、街で昔のような人の交流を復活させようというプロジェクトを始めたらしい。そのシンボルとして「生け垣」に注目している。生け垣は、文字通り丈の低い樹木を植え並べてつくった垣根だが、曖昧さが特徴だ。こちらとあちら一応の区切りはあるが、人を拒むものではない。行こうと思えば自由に行き来できる気分がある。もちろん緑の癒し効果もある。とはいえ、通りをやり替えることは不可能なので、生け垣の考えだけを踏襲し、ビルの壁に樹木をペイントしようと企画し、企業に声をかけている。通りを緑のウォール街にするんやと、若い時そのままに息巻いていた。

 この話を聞いて思い出したことがある。私はスポーツの総合カタログや商品データベースの作製に長く携わってきたが、そこで感じていたことだ。全体の整理をする上で分類を行う。野球、シューズ、ポイントと言った具合に。店舗の品揃えや販売実績を整理する上でも、分類は欠かせない作業の一つだろう。できるだけわかりやすく、後で分析しやすいように、また普遍性があるようにと考える。こうした作業は管理という点では正しいのだろう。しかし、新しい提案や成長性という点ではどうだろう。すでに出来上がった枠の中に成長の目は見つけにくい。カテゴライズされていない所、既存の分類と分類の間に、チャンスは潜んでいることが多い。間にあるものを大切にしたいという事で、思い出した次第だ。

 近年は、ゼロとイチですべてを表現するデジタル化や、共通の単一価値で管理するグローバル化が進み、何事も白黒をつけることを良しとする風潮になっている。自分を振り返っても、一定の枠の中で論理を優先するよう部下に強要している毎日がある。枠組を決め順序立てて進めるのは、最も省時間になり効率的であるのは事実だ。枠組みは、過去の活動を集大成したものとも言える。私達は先人が長い時間をかけて築いた経験や知恵を、短時間でトレースさせてもらっている。ここで得た時間は、新しい何かを生むために使いたいものである。