寿円佳宏 wonderland

スポーツ業界紙「スポーツフロンティア」に掲載しているコラムをブログで紹介。

今の仕事すべてが未来につながる(21012年8月)

 新しい部署に移ることになり、ベトナムと中国の工場を視察してきた。これまでも撮影で国内のグラブやバット工場を訪れたことはあったが、海外の工場を見るのは初めてだった。今回9社を訪問したが、台湾系企業のパワーを感じた。台湾系企業がPCや家電の受託生産で他社を圧倒しているのを耳にしていたが、スポーツにおいてもその一端を感じた。製品の機能開発は行なわないが、大量生産のノウハウ、プロセス管理、工員の教育、さらに台湾系企業のネットワークは、真似のできない独自技術と言える。ある工場は、施設も新しく、うまく流れている巨大工場を、将来を考え2年以内に移転するとさらっと言うのには驚いた。これまでにも何度か移転を重ねており、インフラさえあれば、どこへ行ってもやれるノウハウの蓄積と自信からの言葉だろう。地元に残る企業も、ロボットを導入したり、コア技術をベースに取り扱う商品を大きく変更したりと、変化対応のスピードと決断力の強さを感じた。

 私は商品の開発生産に関する経験はないが、これまでの仕事で経験してきた事と共通することも多く発見できた。工場の管理はどこも、トヨタカイゼンカンバン方式を何らかの形で採用している。目標とカイゼンの進捗を数値で見える化するやり方は、ISOや物流センターの運営と同じだ。効率をあげるために、一人二役多能工化や、波動を少なくする努力など、工場と物流はよく似ている。商品の企画開発においても、広告企画やシステム開発に通づる所が多い。デザインや企画は、最小の要素、行程で目標を達成しようと考える。それが最も美しく、伝わりやすく、品質の安定につながる。システムのプログラムは、簡素に書かれているほど、安く、品質が高く、後の保守やメインテナンスもやりやすい。新しい仕事でも、全体を俯瞰し、少ない工程で企画する習慣を定着させたいものである。

 こうした中で一つ言えるのは、私達それぞれが行っている仕事のノウハウは、今の業務を遂行するのに役立つのはもちろんだが、将来違った仕事に就いた時、何らかの形で必ず役立つということだ。すべては未来の仕事につながる、今の仕事に無駄なものはないと言われるが、それを今回の出張で改めて感じた。