寿円佳宏 wonderland

スポーツ業界紙「スポーツフロンティア」に掲載しているコラムをブログで紹介。

人は効率よりも心理で動く(2012年6月)

 あまり縁がなかった病院に、立て続けにお世話になった。そこで出会った病院話を3題ご紹介したいと思う。一つはお見舞いに訪れた総合病院での話。病院にしては異常にPCが多い事が気になった。入院している方から話を聞くと次の通りだった。患者は全員バーコード付きのリストバンドを手首にはめており、病院内の出来事は全てバーコードをスキャンして進められる。病室には患者の名札さえない。毎日世話をしてくれる看護師さんも都度違っており分業が徹底している。PCの多さはデータを集め一括管理するためだった。医師や看護師の不足をITがカバーしている。患者からすると担当がいないのは不安だが、病院からすれば効率を上げられる。近未来的というか不思議な感覚であった。同時にこれからは、こうした病院を手配してくれたり、継続的に相談できる身近な主治医の役割が大きくなりそうだと感じた。適切に効率よく治療できるのは有り難いが、相談できる安心感も大切だ。

 二つ目は、虫歯の治療をしてもらった歯医者さんの話。前回の治療から時間が経ち、そろそろ歯のケアに来られませんかという連絡。今の状態を維持するには、定期的なケアが有効ですよとアドバイスをもらっていたのを思い出し、重い腰を上げることにした。この歯医者さん、中高年の心をわしづかみにしている。サービスを治療から予防に変えることで、対象顧客は増え、しかも定期的に来院を見込める。病院、患者どちらにもメリットがある話である。

 三つ目は、診療日の関係で予約制と予約なしの整形外科二軒にお世話になった時の話。私はどちらも初診でそれなりに待つ事に。どちらの仕組みがうまく回るのか、暇なので眺めていた。予約制は、予定時間に来院しながらも進行の都合で遅れている人や、予定時間に遅れ後回しになった人、待ち時間の割にイライラしている人が見受けられた。予約なしの所はそれなりに待つ事になるのだが、ここを選んだ時点であきらめているのか落ちついた雰囲気であった。予約制の方が病院、患者共に効率的なはずである。が、期待値という心理が関係すると話は簡単ではなくなる。効率では測れない、人は心理に影響される事を改めて感じた次第である。