寿円佳宏 wonderland

スポーツ業界紙「スポーツフロンティア」に掲載しているコラムをブログで紹介。

一人勝ち世界はつまらない(2012年11月)

 毎日通う朝の駅前で、元大臣という人の街頭演説に出会った。熱心さを感じるより、こういう人でも朝立ちしないと難しい状況なんだというのが印象であった。衆議院解散の時期が迫り、党や議員の動きが活発になっている。今議席を持つ人は今の党で議席を保持できるか、離党し新しい道を選ぶべきか、様々なシミュレーションを繰り返す。前回敗北を味わった人は、二度と辛酸をなめないよう全力で復帰を目指す。水面下では、私達が知るすべもない駆け引きが行われているのだろう。勝ち馬に乗るという言葉があるが、選挙は候補者も有権者も含め、最も象徴的にそれが現れる。有権者においても、多くの人が個々に自らの意思で投票している間は、選択は正しそうである。一定の量を超え、メディアや回りの影響を受けると歪み始める。多くの流行は、25パーセントがブレークするポイントと言われるが、このあたりから自分の意思でなく多数派に乗ろうという力が働く。直接的な利害に関係しないのに、不思議と自分の意見や票が無駄になるのを嫌うのだ。ある一定の線を越えると、雪崩のように一気に片方に傾くのは、こうした心理が働くからだ。ブランドや企業の成長も良く似ている。

 最近はこうした変化のスピードがあまりにも早い気がする。マイクロソフト、ヤフー、グーグル、アップル、ツイッターフェースブック、アマゾン、ラインなどなど、世界に広がるまでの時間が短くなると共に、入れ替わるスピードも年々早くなっている。今のフェースブックと1年前のフェースブックに感じた期待感はずいぶん違う。遠い過去のような気さえするのは私だけではないだろう。こうなると技術の進歩というより、気分の雪崩現象に左右されているのではと疑いたくなる。また、ネット系だけでなくリアルビジネスを含めた全ての分野で、さらなるグローバル化が進み、幸か不幸か一人勝ちの様相を呈してきた。言葉を失うと文化を失うと言われるが、いたる所で便利さと引き換えに長く育まれてきた大切なものを失っているのではと心配する。青い鳥を探す旅のように、真のグローバル化を追求するとローカルに帰ると信じたい。スポーツにおいても同様の期待と危機があるように思う。