寿円佳宏 wonderland

スポーツ業界紙「スポーツフロンティア」に掲載しているコラムをブログで紹介。

スポーツは心と体に効く(2016年6月)

 縁あってアンプティサッカーに協賛をしている。アンプティサッカーは、手足の切断障がいを持つ人の7人制サッカーで、日常の生活やリハビリで使用されるクラッチ(杖)を使いプレーする。クラッチで全体重を支えながらボールを扱う姿や、フィールドを駆け抜けるスピードと激しさには本当に驚かされる。日本の競技人口は約80名。先日行われた大会には、北海道から九州までの8チームが参加。日々自主的にトレーニングをし、人によっては何時間もかけチームの練習に通い、そして半年に一度の大会に遠方から集まってくる。何がそこまで熱中させるのか。彼らにとって大会は最も大切な時間。この時間のために毎日を頑張っているようにさえ見える。プレーは真剣勝負そのもの。優勝を、そして一つでも上の順位を果敢に狙う。ゲームの合間は、リラックスして半年ぶりの近況を確かめ合う。元気に頑張る仲間の姿が、次の活力になっているのだと思う。小学生のプレーヤーもいるし、今年からは女性プレーヤーも入った。老若男女が一緒にプレーするのもアンプティサッカーの特徴で微笑ましい。中学のサッカーチームでプレーしていたが病気でアンプティサッカーに転じたK君もいる。以前一緒にプレーした仲間達が駆けつけ、大きな声援をおくっていた。K君はゴールと笑顔で応え、ヒーローインタビューでは観客席から声が小さいと冷やかされていた。こういった小さな集積が、かけがえのない大切な時間になり、熱中させるのだと思う。

先日、ハグやカラダのふれあいが病気の治癒に不思議な効果があると耳にした。確かに小さい頃、熱を出して苦しんでいる時、家族がそばにいて手を添えてくれると、楽になったような気がした。反対に病は気からと言われるように、過度なストレスは健康を蝕む。長年連れ添った伴侶を亡くし、気落ちから健康を失う話もよく聞く。それほど、カラダとココロの関係は一体ということだろう。アンプティサッカーだけでなく、すべてのスポーツには人を勇気づけ、ココロを満たす力があるのだと思う。少子化は止められないが、こうした体験ができれば、スポーツ人口はもっと増やせるはずである。また汗を流した後のビールのうまさもスポーツの贈り物である。