寿円佳宏 wonderland

スポーツ業界紙「スポーツフロンティア」に掲載しているコラムをブログで紹介。

置き換えの習慣(2014年8月)

 1カ月にわたって開催されたワールドカップもドイツの優勝で幕を閉じた。日本は大会前の評判は高かったが、残念ながら予選リーグで勝利することなく敗退した。敗因や今後については、メディアやネットだけでなく人が集まる多くの所で議論されている。サッカーはその国の国民性が強く現れると言われる。それだけに課題を置き換えると、私たちの仕事や生活に活用できるヒントがたくさんある。今回は私が感じた幾つかのことを話したいと思う。どれも当たり前の事だが、忘れていたことを思い出すにはいいきっかけであった。

 一つは、自分たちも成長するが相手も成長するということ。今回のスペインや日本が象徴的だった。自分の仕事に置き換えると、商品開発で競合商品を研究するが、それは半年1年前の競合の姿だ。商品が出る頃には、競合商品はさらに進化している可能性が高い。打ち勝つには競合の現状ではなく未来の姿を想像し、二段階以上の進化が必要ということだ。

 次は、こちらが相手を研究するように相手もこちらを研究しているということだ。一つの策しかないと、想定外の障害に会うと対応できなくなってしまう。様々なディフェンス、障害が当たり前と考えれば、複数のオプションを準備するはずである。一の矢でダメなら、二の矢、三の矢を繰り出す力だ。身近なことに置き換えると、自信作と思い込む商品ができた時が危ない。誤った過信から次の手を打っていないため、一度つまずくと脱け出せないケースがある。ディフェンスのように次々と襲ってくる障害に対応するには複数の策を準備し、引き出しを多くしておく必要がある。日本はここで躓いた。

 最後にもうひとつ、日本戦はライブで見ビデオでも見直した。ライブでは勝ってほしいという思いが強くどうしても偏った見方になる。結果がわかっているビデオでは冷静にプレーを見ることができる。同じものでも、肩入れや雑念が入ると違ったものに見えてしまう。日々の仕事においても、事実の中に期待や願望が紛れ込んだり先入観から間違って見ていることが結構あるのだろうと自省する。興味あることを身近なものに置き換えると、ヒントになることがたくさんある。ぜひ置き換えの習慣をつけていただきたいと思う。