寿円佳宏 wonderland

スポーツ業界紙「スポーツフロンティア」に掲載しているコラムをブログで紹介。

ひと回りして、やっぱここがいい(2014年6月)

 グランモール大阪やハルカスなど、大阪も東京に負けじと開発が進む。産官学連携や日本一高いビルなど話題も豊富で、集客も上々のようである。こうした所もいいが、今一番行ってみたいと思わせてくれる所が出てきた。文の里商店街だ。大阪の南に位置する下町の典型的な商店街の一つ。その中でがんばっている商店街を盛り上げようと、大阪商工会議所と文の里商店街が電通関西支社の協力を得て「文の里商店街ポスター展」を実施している。60名のクリエイターが、商店街52店舗のPRポスターを作成。その作品が実に伸びやかでワクワクさせてくれる。広告の効果測定がしやすくなったことで効率化が進み、どこも同じようなものになっていただけに、この企画や作品は実に痛快に感じられる。人がいることの大切さ。顔が見える強さを改めて思い出すことができた。作品 は、http://www.osaka.cci.or.jp/nigiwai/postar/ でご覧いただける。どれも秀逸だが、いくつか紹介するとこんな感じ。昭和そのままの店先に立つ老店主。ポスターを撮影するカメラマンに語りかけるように「ポスター?、はよ作ってや。死ぬで」のコピーが添えられる。クレジットはお漬かれさまでした大嶋漬物店。もう一つ紹介すると、夏の晴れ渡った清々しい川に絶壁から気持ち良さそうに飛び込む少女、コピーは「アホにつける薬はあれへん」。かしこい薬の使い方ご相談ください阪和薬局の作品。どれもこれもカッコよすぎる。
 さらにこのポスター展を盛り上げようとウェブサイトと商店街で「文の里商店街ポスター展・総選挙」を年末まで実施。ちゃっかり総選挙と銘打ちAKB人気にあやかっているのも大阪らしい。60名のクリエイターは、作品発表の場としてボランティアに近い形の参加だと思う。告知も私がこうして書いている様にSNSなどでどんどん拡散している。先にも触れたが、効率化やグローバル化が進むほど、人が注目されるということ。大きなお金を使わなくても、共感できる企画であれば、多くの人がもり立ててくれる。遠くに来たつもりだったが、気がつくと昔歩いた道。時代は変わっても人はそう変わらないのかもしれない。