寿円佳宏 wonderland

スポーツ業界紙「スポーツフロンティア」に掲載しているコラムをブログで紹介。

もう他人事ではないオープン施策

 トヨタの動きが激しい。100年に一度の業界再編という事で、豊田社長が陣頭に立ち改革を進めている。直近ではスズキとの資本提携、その前にはマツダ、スバルとの提携を相次ぎ進めてきた。驚いたのは、少し前になるが二つのニュース。一つはソフトバンクグループとの提携。豊田社長と孫社長が並んでいる姿は新鮮であった。「次の手を打とうとすると、いつもそこに孫さんがいた」という豊田社長のコメントが全てを象徴していた。もう一つは、トヨタがハイブリッドや電動化の特許2万数千件を無償公開したニュース。トヨタは直近的な利益より、技術を公開する事で世界標準になる道を選んだ。囲い込むより開放する方が、成果が大きいと考えたのだ。

 この考えは様々な所で広がりつつある。同じ自動車メーカーでは、ボルボがこれまで蓄積してきた事故データを公開。ボルボは、過去にも3点止めのシートベルトの特許を公開し、「安全のボルボ」をブランディングしてきた経緯がある。身近な所では、熊本県の「くまモン」は代表的な成功事例だろう。古くは小泉純一郎首相時代の「チームマイナス6%」キャンペーンもそうだ。一定の基準を満たせば、誰でも自由に参加できた。これにより一気に認知が進み、「クールビズ」や「ウォームビズ」は当たり前になった。

 この流れはスポーツでも起きている。Jリーグは令和元年を迎え、打ち出した施策がある。Jリーグはスタート時から「100年構想」を掲げ、サッカーだけでなく地域とスポーツの関係を築いてきた。平成510チームでスタート。今年は38都道府県55チームに拡大。平成と共に地域に根ざすリーグに成長した。令和を100年構想の第二期と位置づけ、さらなる地域との繋がりを探っている。選手やファンだけでなく、範囲は高齢化や健康、子供の教育など多岐にわたる。その実現のため、Jリーグを使って欲しい。Jリーグが地域に何ができるかから、地域がJリーグを使って何ができるか。主語を変えた取り組みを期待しているという。この考えは、先の事例の延長にある。我々が思う以上にスポーツの影響力は大きい。社会の課題解決に、届けたいサービスやメッセージをスポーツに乗せるのはどうだろう。