寿円佳宏 wonderland

スポーツ業界紙「スポーツフロンティア」に掲載しているコラムをブログで紹介。

プロジェクトに呼ばれるために

 人生100年時代と言われ、少なくとも80年以上を生きる時代になった。少し前、父親たちの世代は55歳が定年で、10年ほど余生を過ごし人生を終えるのが普通であった。70歳以上だと長生きで良かったですねと、声をかけていた様に思う。今は60歳定年が多いが、年金支給は65歳から。年々、給付時期が遅くなり約束が違うと言いたいが、平均寿命を考えると解らなくもない。退職後10年が余生という暗黙の設計から逆算すると、最低70歳まで働く必要がある。漫画「サザエさん」に登場する磯野波平さんは永遠の54歳。失礼な言い方になるが、ハゲ頭で丸メガネ、家ではいつも着物姿。今の時代こんな54歳はいない。どうみても70歳以上だ。何事においても、今と比べ10歳以上の差がある。

 これからの人達は、約50年にわたり働く事になる。日本企業の平均寿命は25年。個人の時間の方がはるかに長いのだ。こうなると、最初入った会社で最後まで勤め上げる終身雇用は、もはや成り立たない。それぞれが段階的に仕事や会社を変える様になるはずである。働き方改革の取り組みも加わり、企業も個人も大きな意識改革が求められている。またスピードが早く、事業に必要な能力も多様で、全てを一つの会社で行うことは難しい。これからはプロジェクト型で、複数の企業や多彩な専門家が集まり事業を進める事になる。個人も複業という形で、複数の顔を持ち経験を磨いていく。こんな世の中で存在を示すには、今まで以上に強い専門分野をもつ(可能なら2つ以上あるのが望ましい)。自分のやりたいテーマを明確にする。これが大切だと思う。しかも苦労して身につけた能力も、その賞味期限は思った以上に短い。安住を許してくれない。学び、変わり続けるしかないのだ。

   協業やオープンイノベーションを進めるには、時代の変化に対応するだけでなく、自分は何者か深く意識しておく必要がある。外の世界と同時に、内の世界(自分自身)にも目を向ける。グローバルを意識すればする程、アイデンティティが重要になるのと同じだ。桁違いの情報に飲み込まれないためには、ブレない軸が必要で、童話の「青い鳥」ではないが、それはいつも自分の中にある。