寿円佳宏 wonderland

スポーツ業界紙「スポーツフロンティア」に掲載しているコラムをブログで紹介。

お金で買えないもの優先(2015年7月)

 先日、リゾートホテルでゴルフを楽しむ機会があった。会員制のリゾートで平日ということもあり、年齢の高い夫婦やグループが目立った。リタイア後、ゆったりと夫婦や仲間でコースを回るのは幸せそうで、こうなりたいものだと感じた。が、これを実現するにはクリアすべき条件があると気づく。まずお金と時間、さらに健康であること、伴侶と共通の趣味も必要だ。これが揃ってはじめてこんな時間が可能になる。周辺を見渡しても、これが揃っている人は少ない。お金はあるが時間がない。時間ができるとお金がない。運良くお金も時間も揃ったが、健康が思わしくなかったりと、なかなか揃わない。我々の年代や先輩方は若い時期は仕事を優先し、リタイアし時間ができたら旅行や趣味を楽しもうと考える人が多かった。だから現役時代は家庭を顧みずがむしゃらに働いた。しかし時間を手にした時、すべてが揃っている人は運がよく、残念ながらの人の方が多い。

 自分の子供やその友達を見ていて感じることだが、今の人たちの価値観は私たちとずいぶん違ったものになっていると思う。ギラギラした所がなく飄々としている。私たちがリタイアしたら楽しもうと思っていたことを、今この時に実現しようとしている。お金へのこだわりが少なく、お金の使い方も合理的である。他人の目を意識した消費でなく、自分の考えで消費しているのが一番の違いだ。クルマは所有するものでなく必要な時に借りればいい。ファッションも異性のためでなく自分の快適さのため。だから気持ちいい素材やデザインが主流になっている。仕事は生活の一部であるが、大切なものは他にもある。収入は限られていても工夫し、賢く今の時間を楽しむ人が増えているように見える。。

 都市で高い収入を得て、最先端の高い消費を楽しむ生活はエキサイティングである。田舎で収入は少ないが、自然や人情に囲まれて少ない消費で暮らす生活も悪くない。今の人たちは、場所や収入に関係なく、身の丈に合わせて自由に消費をコントロールし、自分のやりたいことを先送りしない。社会が成熟したことで、衣食住に追われることなく、自己実現や世の役にたつ夢の実現が、誰にも可能になったということだろう。