寿円佳宏 wonderland

スポーツ業界紙「スポーツフロンティア」に掲載しているコラムをブログで紹介。

日本代表ソニーの逆襲(2013年10月)

 2020年オリンピック・パラリンピック東京開催の決定。パソコン2台で打ち上げ管理をする新ロケット「イプシロン」の成功と、久々に日本中を元気にするニュースが続いた。誰かがメダルをとると、いい流れが伝染し次々とメダルをとるのに似ている。福島の原発処理など課題はあるが、今のいい流れが続いて欲しいと思う。同じ時期にソニーが久しぶりにソニーらしい商品を出していた。見た目はレンズだが、カメラの機能を備える「レンズ型カメラ」だ。WiFiでつないでスマートフォンの液晶画面をモニターにする。スマートフォンと一緒に使う発想が新しい。スマートフォンのカメラでは物足りない、かといって別のカメラを持つ程ではないという人は多いはずである。スマートフォンが簡単に高機能カメラに変わる。様々なSNSを通じ画像で語る時代の気分を掴んだ商品だと思う。世間の話題は同じタイミングで発表されたアップルのiPhoneに集中していた。今回のiPhoneは期待されるイノベーションが少なく、株主をはじめ世間をがっかりさせた。ウォークマンで音楽を外に持ち出し成功したソニー。音楽の買い方を変えたiTunesのアップル。ソニーは自社の音楽レーベルを守る意識からオープン化に遅れをとった。今回は、自社のXperiaだけでなく、サムソンもiPhoneにも対応する。今後もこうしたイノベーションを繰り替えしていくのだろうが、共通しているのは商品から得られる私達の生活の変化、ワクワク感である。今回のカメラも、プロのような写真をとることではない。自分が見ているのと同じ風景や、瞬間を大好きな人たちと共有したい。スマートフォンのカメラでは伝えきれないものを、このカメラはカバーしてくれる。気持ちを表現したり、友達とコミュニケーションする所に価値がある。

 スポーツで言えば何だろう。もちろん一番になる喜びもあるが、より多くの人にとっての喜びは、自らの小さな目標を達成することや、家族や友達と喜びを分かち合うことだろう。機能を高めることは各メーカーが競い合い目覚ましい発展を遂げてきた。しかしより多くの人にスポーツを日常として楽しんでもらうには、その後のコミュニティ機能が不可欠なように思う。