寿円佳宏 wonderland

スポーツ業界紙「スポーツフロンティア」に掲載しているコラムをブログで紹介。

イノベーションが市場を大きくする(2013年5月)

 ネスレのコーヒーマシン「ネスカフェゴールドブレンドバリスタ」が売れている。「手軽に飲める本格派家飲みコーヒー」がコンセプトで、価格は7,980円と思わず手が出そうな価格に設定されている。本体で儲けるのではなく、後のランニングで稼ぐひげ剃りやコピー機と似たビジネスモデルだ。普及キャンペーンとしてオフィスへの無償貸出しを1万5000人に行い、SNSでも話題になっていた。また、顧客体験をしてもらうための路面店「ネスプレッソ」や、カプセル式で一杯づつ入れたての本格コーヒーが作れる「ネスカフェドルチェ」を先行展開し話題を作っていた。ドルチェは、スタバにも負けない一杯が50円程度で飲めるのがうたい文句。お店で飲むのに比べると割安だが、これまで家で飲んでいたインスタントに比べると割高感はゆがめない。バリスタはこの障害を解決した商品で、1パックで40杯から60杯飲めるエコパッケージになっており、本格派コーヒーなのに割高感がない。

 ネスレECサイトを見ると、様々なマシン、カフェのメニューのようなコーヒーが並んでいる。昔の瓶入りインスタントコーヒーのイメージはどこにもない。コーヒー屋という歴史をベースに、コーヒーのある現代的なライフスタイルを提供する会社に脱皮している。また、こうしたサービスは家庭だけでなく、オフィスのスタイルも変え、さらに業務用でも大きな変革をもたらしている。コンビニやファーストフード店がカフェ化している裏には、熟練者がいなくても本格コーヒーを提供できるシステムの普及があるのだろう。施設やホテルでもこうしたマシンを設置し、顧客満足をあげている所を見かける。

 街の喫茶店から、マックやドトール、スタバに。ジョージアやボスも市場を広げ、コンビニや家でも手軽に本格コーヒーが味わえるようになった。成熟市場に見えていたコーヒー市場は、商品や販路のイノベーションが次々に起こり、主役がめまぐるしく変わりながら市場が大きくなっている。スポーツも、カテゴリーキラーやネットなどの登場はあるが、イノベーションと呼べる程の変化はまだこれからのように思う。成熟化の裏で次のイノベーションは今か今かと出番を待っているはずである。