寿円佳宏 wonderland

スポーツ業界紙「スポーツフロンティア」に掲載しているコラムをブログで紹介。

もうひとつのABCに学ぶ(2013年4月)

 料理教室最大手に成長したABCクッキングスタジオ。いくつかのショッピングセンターで、ガラス張りの教室を見かけ、面白いなと注目していた。今利用できるのは女性のみで、中心顧客は21から30歳のOL。おしゃれな若い女性がジムや英会話に通うように、料理を楽しんでいる。自分なりのアレンジでカロリーをコントロールしたり、ホームパーティーで腕前を披露し喜ばれるのは誰だって嬉しい。料理は作る楽しさとコミュニケーションを円滑にする魅力を備えている。しかし料理の腕をあげるだけなら、ここまでの人気にはならなかっただろう。彼女たちにとって、ガラス張りのスタジオは将来の我が家のキッチンで、料理を真ん中に家族や友人と楽しく過ごすライフスタイルそのものを疑似体験している。ここに人気の秘密があるのだと思う。

 ABCクッキングの前身は鍋を売っていたらしい。コンセプトは「食の大切さを伝える」、そのためには「笑顔のある食卓を」、そのためには「手作りするきっかけを」ということで、スタジオを始めたらしい。プロ養成の場でもなくスクールでもない。楽しく料理を学んで、誰かのために作る。それが食卓に笑顔を生む。実にわかりやすく参考になる。

 もう一つ、今幼児の英会話教室が脚光を浴びている。どこかの教室は「英会話を学ぶのでなく、英語で将来必要なことを学ぶ」とうたっている所もあった。私達に近い所では、英会話だけで学ぶスポーツスクールがある。もともとスポーツは英語をベースにしたものが多く、子どもたちも日本語か英語か気にせずに使っている。好きなスポーツをしている中で自然に身につく。最も望ましい形である。これまでも、こうした価値を認めながらも、規模が小さく広がりが限定的ということで後回しになってきた。市場が拡大し、物が右肩あがりに売れていた時はそれで良かった。しかし流れが変わった今、真剣にコトビジネスに取り組まねばならない。小さなイベントでも、ネットを活用すれば、手軽に広く共有することもできる。体験したり参加する場ができれば、必然的にモノ販売にも繋がる。今後モノ付きサービスが主役になると思われるが、スポーツは料理並みに最も近い所にいる業種である。