寿円佳宏 wonderland

スポーツ業界紙「スポーツフロンティア」に掲載しているコラムをブログで紹介。

オール・ベンチャーズ(21012年3月)

 スイスで行われた若手バレエダンサーの登竜門とされる「ローザンヌ国際バレエコンクール」で優勝した高校2年生の菅井円加さん。女子スキージャンプで、大倉山の新記録、国内最長不倒記録を達成した中学2年生の高梨沙羅さん。まだあどけなさが残る女学生が、ものおじせず世界レベルで活躍する姿は、感激すると同時に何かを考えさせられる機会になった。スポーツでは、宮里藍選手や石川遼選手など、早くから若手が世界で活躍していた。なのに他の分野から若い人が出てこないのは何故だろうと考えていた。以前にもこのコラムで触れたことがあるが、組織や過去の経験にしばられた世界と、フラットで実力本位の世界の違いだろうと、勝手に結論づけていた。現にスポーツだけでなく、ゲームや音楽などフラットで実力本位な世界では、若い人がいきいき活躍している。硬直化した組織や考えを変えることができれば、ビジネスでも先日マザーズに最年少で株式公開した「リブセンス」の村上 太一さんのような若者が、どんどん出てくると期待したい。

 先日、あるシンクタンクの女性がこんなことを語っていた。今の経営者や管理者が若者に元気がないと感じるのは、ハングリーの感じ方が違うからだ。上の世代は「お金」や「モノ」にハングリーで、今の若者は「共感」や「社会を良くしたい思い」にハングリーだ。東日本大震災があったこともあるが、世の中に貢献したいと考える人は増えている。またグリーの田中良和社長のように、社会に役立つことで日本を再生したいと公言し実行する人も出てきた。さらに、日本でも初めから起業する若い人が増え、価値を理解できるベンチャーの先人達が出資側に回り、遅まきながらシリコンバレーのような環境が整ってきた。ここから生まれる若い超小型、超高速のベンチャーが日本を変えるかもしれない。日本企業の低迷は、行き過ぎた安全の錯覚や事勿れ主義、ベンチャーの不足と言われた。2011年は大震災を期に、ソーシャル元年、インフラ元年、そしてベンチャー元年と、大きな変化の年となった。若い人の活躍に刺激され、自分にとって何かの元年にできたのか、もう一度考える気になった。