寿円佳宏 wonderland

スポーツ業界紙「スポーツフロンティア」に掲載しているコラムをブログで紹介。

測るビジネスが面白い(2012年2月)

 測れるものは改善できると言われる。確かにゴルフやマラソンは、スコアやタイムを測れるから面白い。練習の成果が数値となって現れ(そうありたいが)、少しでも成長していると楽しい。楽しいから続けられ、それが好循環になる。ダイエットや禁煙も同じだ。苦しさを乗り越え何日か続くと、ここで諦めるのはもったいない。もう少しもう少しと日数を重ね、めでたくということになりやすい。さらに、一人でなく誰かと一緒だとなお効果的である。くじけそうな時に言葉をかけ合ったり、仲間ががんばっている姿を見て奮起したり。一人だとできないことが、仲間とならできる。スポーツはもともと、測る、仲間と一緒の要素を強く備えている。一等賞をとる競技から、最近は自らの目標と競争するようになり、ライフスタイルとしてのスポーツが広がった。この次は生活そのものを測り、健康管理に役立てるようになるだろうと考えていた。オムロンタニタの健康器具はその先頭ランナーであるが、ナイキが新しく出した日常の活動量を測定記録する「フエルバンド 」が面白そうだ。手首にバンドをつけ普段どうりに生活をすれば、その日の活動量がバンドのディスプレーに光で表示される。さらにデータはiPhoneアプリを経由しNike+ウエブサイトに記録される。フエルバンドがいいのは何か特別なことをする必要がないところだ。ルーティンの中にとけ込んでいるのがすごい。これまで普及していなかったのは、測るのがめんどうで習慣化できなかったからだ。トイレに座るだけ、歯を磨くだけといった、毎日の生活習慣の延長で測定できればいいと思っていたが、フエルバンドは、手につけるだけ。それで自分の身体の状態を知り管理できるとなると、健康ビジネスの新しい一歩を踏み出すのではと期待する。病気になれば医療の役割だが、予防の分野ではスポーツができることは大きい。測る、健康管理のプログラムや商品そして場の提供、この一連の仕組みに役割がありそうだ。スマートフォンクラウドSNSなどの進化ですべてのものがネットにつながり、夢物語が一気に現実化した。また人々の価値が、モノからモノや情報が生み出すサービス、体験に移るのも加速しそうだ。